大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和39(オ)914 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告指定代理人武藤英一、同宇佐美初男、同中村盛雄の上告理由第一点一につい

て。

原判決が本件A地点を所論史蹟であると確定していないことは所論のとおりであ

るけれども、原判決判示によれば被上告人がその地点を史蹟であると確信し、その

確信が単なる被上告人の独断的幻想ではなく、その旨の一応の推定を受ける程度の

証拠があり、かつ、これをくつがえすに足る証拠がないというのであるから、この

ような場合には、被上告人の右心情が本件損害賠償請求による保護を受けるに足る

ものとした原審判断は相当である。原判決には所論の違法は認められず、論旨は採

用できない。�

同二について。

原判決(その引用する一審判決を含む、以下同じ。)の認定したところによれば、

旭川開発建設部美深出張所所員数名が、昭和三二年六月一一日頃判示第三物件内で

法線変更による築堤工事のため測量をしていたところ、被上告人これを発見憤慨し

その非を責めたうえ判示(A)箇所は松浦判官の宿営の地であり、これに誇りと愛

着を有しているので、たとえ本件築堤工事のためであつても売却することはできな

い趣旨のことを伝えたというのであり、右事実認定は挙示の証拠により首肯できる。

原判決は、右事実認定に基づいて上告人側において、かかる特別の事情を予見して

いたといわなければならないと判示しているのであるから、その措辞やや簡に失す

るけれども、原判決判示の趣旨は、右被上告人の抗議が当然工事遂行の責任ある地

位にある担当職員に報告されたと推認すべきである旨を判示したものと解せられ、

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右認定判断は首肯するに足りる。論旨は、原判決を正読せずこれを非難するもので

あつて、採用できない。

同三について。

原判決は、本件(A)地点が史蹟であることの古老の言や学者の意見があつたと

の事実を確定しているにすぎず、また、一般には所論標識の地点の方を史蹟と考え

られているとの事実は、原判決の認定しないところであつて、右事実認定は、挙示

の証拠に照らして首肯できないことはなく、原判決には所論違法はない。論旨は原

審の認定しない事実に基づいて原判決を非難するものであつて、採用できない。

同第二点について。所論慰藉料が一五万円を相当とするとした原判断は、原判示

事情のもとにおいては相当と認められ、原判断に所論の違法は認められない。論旨

は採用できない。

同第三点について。

原判決の確定したところによれば、本件第三物件は、被上告人の所有に属し、被

上告人はこれを判示の史蹟であるとしてこれに愛着を感じ、これを所有することを

誇りとしていたところ、国家公務員である旭川開発建設部職員が上告人国の営造物

である天塩川の判示築堤工事に使用するため、被上告人の抗議を無視して右物件中

(A)箇所の土砂を不法に採取して、一旦は原形を全く破壊し、よつて被上告人に

対し精神的苦痛を与えたというのである。原判決は、右事実につき、上告人国は国

家賠償法二条の類推適用により被上告人の受けた右損害を賠償する義務がある旨判

示するが、国家賠償法二条は、公の営造物の設置または管理に瑕疵があることによ

り生じた損害につき国にその賠償責任を認めるものであるから、右の場合に同法条

を類推適用すべきでないことは所論のとおりである。�

しかしながら、原判決の確定した事実によれば、判示の旭川開発建設部職員は、

公権力の行使に当る国家公務員であり、本件土砂採取の行為を河川工事の職務の執

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行としてなしたものであり、また、その行為により被上告人に精神的損害を与える

ことを認識していたか、かりにその認識がなくても認識すべきであつたというべき

であるから、同職員には被上告人に精神的損害を与えたことにつき、故意または少

くとも過失があつたといわなければならない。しからば上告人は、国家賠償法一条

により被上告人に対し判示損害を賠償する義務があるものというべく、原判決の判

断は、結局、相当である。�

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

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